蛇切り岩(U)〔与保呂〕よほろ 26大人用
 

人皇七代孝霊天皇の頃、手力男命(たぢからおうのみこと)、日ノ御神禅(ひのみこのみこと)【天照大神の御子孫】、天児屋根神(あまのこやねのみこと)を招神されて雲龍山の大龍を鎮められた。 

民は日々豊かに楽しく過していたが、二十一代雄略天皇の頃その昔三神をめし招そられた雲龍山の大龍があらわれ万民を悩ますことしきりであった。民は天神地祇に厚く祈り、大龍退治のため、長さ百余丁、横五十丁余の潮水を切り開かせたまう。 

いかなる大龍も神祇の協力に及ばず、たちまち姫に身を変じ、にわかに表われ云う「我は当山の四万千町余を住む天地開朗かれて以来の大龍であるが、御尊の広大なるお慈悲をもって賜うならば、天下を守護し、遠近のへだたりなく火難水難諸々の難を除き御神々の泰平を相守り申すべし、何卒御助命をたまわりたいと誓いを立て奏聞したので、尊は宣誓に相違なければ助命し、末世に残すがどうかと仰せられると、震龍山の峯に黒雲おこり大龍姫は九頭の龍となってあらわれ、末世末代におよび我天下の悪魔怨敵退散のこと手のひらをかえすが如きことなく、神を守護すると三度かえし唱う、その音声妙にして、その響音は天地にとどろくこと雷のようである。 

      
手力男命これを聞召して御手にたずさえていた宝剣にて大岩を横に切なき賜い、この岩中をおまえにつかわす、この岩中に住むべしと仰せられると、黒雲は去り、もとのように晴れわたる。大龍も元の姫となり、我末世末代小龍に身を化し、切りしたまう岩の切り口へ身をあらわし、民に日々の晴雨を知らしめると誓をたてて岩の中へ飛び入った。現在に至るも、岩の切口へ小龍あらわれ日々の晴雨を知らしめる。赤龍は晴天、白龍は雨天、天下に乱がおこるときは、岩中より血流れ大乱がおこる。手力男命が切し賜う岩を俗に龍岩といい伝へ、亦蛇切岩ともつたえる。そこの名を廻りふちといい、山を奥山という。

この川は改修されふたをされたが、岩のところはあけられている