みとじ   三浜みはま13

むかし、むかし、そのむかし、宮ノ川の上流に一の たき、二の滝、三の滝という三つの滝があったそうや。三つの滝には滝つぼあってな、そこには「みとじ」というアワビの化けものが住んでいたそうや。

 ある日のこと、ひとかかえほどもある大きな、大きなアワビが、三の滝できれいなコイに化けて、ゆうゆうとおよいでいてのを、村人が滝のそばを通りかかったときに「バシャーン」と、水の上へはねあがったそうや。村人はなんてきれいなコイだろうと、おもってな滝のそばまでおりて、コイを取ろうと思って手をのばしたんや。すると、とつぜん、ばけものにかわり村人を水の中に引き込んで食べてしまったんや。そのようなことがたびたびあってな、村人をはじめ、 猟師りょうしも、木こりも、こわがって、だれもがこの滝に近づかんかようになったんや。ある日、三浜の村に一人の  修験者しゅげんじゃが、やってきてな。そして、 庄屋しょうやの家にとまったんやって。いろりをかこんで、ばんごはんを、ごちそうになっているときに、この話を聞いたんや、修験者は、「それならわたしがたいじしてやる」と、つぎの朝に出かけていったんや。

 木々は美しくけいりゅうにうつり、流れる水の音に小鳥の声はここちよくきこえたんや。修験者は、すっかりいいきもちになってしまったんや。ふと見ると、きれいなコイが滝つぼで泳いでいるんや、修験者は、思わず手をのばしかけたんや。すると、どこからかカネがなり、そのカネの音はふしぎなことに、「やめとけ、やめとけ」と聞えたんやって。修験者は空耳かと思い、もう一度手をのばすと、「やめとけ、やめけ」と・・・。修験者は、「これが『みとじ』なんだ」と、はじめて気がついたんや。

 どうやって、修験者が「みとじ」をたいじしたのかは、今でもナゾなんだって・・・・。それからというもの三の滝から「みとじ」の姿は、かき消えてしまったんや。修験者のことだからたぶん、み仏のカを借りて「みとじ」をたいじしたんやろうと、村人たちはあらためてむねをなでおろしたのだって。しかし、今でもこのあたりでは宮ノ川の上流を「みとじ川」といい、海でおばれて死ぬと「みとじが引いたのだ」というんやって。


一言 鐘は昔、三浜にあったといわれる天台宗の永源山・徳雲寺の鐘で、地元では今でも、「鐘の音を聞いた」と、いう人が後を断たない。
徳雲寺の跡を継ぎ、現在の徳雲山海蔵寺と改め臨済宗になった。

BC8000年 三浜アンジャ島・石斧出土
AD 200年 古墳時代横穴式古墳
天然記念物 オオミズナギシドリの繁殖地 冠島
天然記念物 三浜海蔵寺のシイ林